トルーディーのちりとじかんのおうち


 販売元:システムソフト
  定価:8800円(税別)
動作環境:Win3.1, Win95



 CD-ROMによる子供の教育ソフトは、普通、情操教育系と、学習系の二つに分けられる。情操教育系には、色や形を覚えるパズルのようなものや、迷路ゲーム、マウスクリックの練習による反射神経や知覚能力の訓練、音楽を使った情操のトレーニングなど、3歳〜6歳くらいの、小学校に入る前くらいの子供が対象になることが多い。
 また、学習系は、文字を覚えたり、アルファベットや単語を通して英語に親しんだり、数の数え方や計算能力の訓練、漢字の学習、英会話などが中心になる。
 現在発売されている「エデュテーメント」と呼ばれるソフトウェアのほとんどが、これらの要素を組み合わせたものだ。モニタの画面で見て、マウスで何かを行う、という行為と、学習とを考え合わせると、だいたいそういうことになるらしい。
 まあ、だいたいそんなものかな、と思っていたら、まだ盲点はあったようだ。
 「トルーディとちりとじかんのおうち」は、タイトル通り、「地理」と「時間」を勉強しようというCD-ROMだ。対象年齢は3歳〜6歳と、情操教育レベルの年齢設定で、そんな年齢から地理と時間?という感じだけど、もちろん、そんな本格的なものじゃない。小学校で習う、時計の見方と、方向感覚、地図に親しむ、といった、ごく初歩のお勉強だ。
 でも、これが結構役に立つ。まず、子供って、時間の感覚がない。だから、遊びに夢中になると、果てしなく、体力が続く限り遊び続ける。「あと30分ね」とか言っても、そもそも時間の感覚がない上に、時計の見方も知らないから、「ハイ、終わり」と言っても聞きやしない。そこで、とにかく、時間というものがあって、それが「時計」で表されている、ということだけでも教えておくと、何かと便利だ。このソフトでは、デジタル時計とアナログ時計がそれぞれキャラクターになっていて、数字と針の両方で時間を教えてくれる。文字盤の位置や、数字と針の関係、時間と一日の動き、さらにカレンダーを使った、一日という単位や一か月という単位(子供には気が遠くなるほどの長さみたいだけど)なんかも教えてくれる。時間が経つと、周囲がどのように変化するのかとか、日にちが経ち、季節が変わる様子などを、アニメーションとナレーションを多用した構成で、見せてくれるから、感覚的に覚えることが出来るし、単純な操作で、すぐに結果が出るから、何度でも繰り返しトレーニング(と言っても遊びだけど)出来て、いつの間にか時計が読めるようになるという仕掛けになっている。
 「地理」に関しては、全部で三つのセクションに分けられている。一つは、お腹を空かしたアリさんをゼリービーンズのあるところに連れていってあげるゲームで、前後左右、東西南北といった方向感覚を養うもの。相対的な方向としての前後左右と、絶対的な方向としての東西南北を、一つの画面で見せてくれるから、混同して覚えにくい両者の関係を把握しやすいのが魅力。この「方角」というのは、それほどしっかりと学校で習うわけでもないし、人によっては鬼門になり兼ねない部分なので、このようにグラフィカルに表現され、なおかつ、ゲーム感覚で教えてくれるのは有り難いと思う。このあたり、教育にうるさいアメリカが作ったソフトだな、という感じがする。このような作品がきちんと日本語化されているのは嬉しい。
 もう一つの、「地理」の勉強は、ロケットに乗って世界を空から見渡し、世界の様々な所の記念写真を撮ろう、というゲーム。世界地図と、それぞれの国の位置関係、及び、それぞれの国を代表する建造物や場所などを教えてくれる。ちょっと難しそうだけど、この間、電車に乗っていた子供(4歳くらい)が、お母さんに「どこに行きたい?」とか聞かれて「シカゴ」と答えていたし、こういうのは、勉強と言うより興味の範囲で楽しいのではないかと思う。ロケットというネタと、空中から目的の場所に近づいていくインターフェイス、記念写真というイベントなど、うまくゲーム風にまとめてあるのもいい。
 更に、砂場に山や川を作って、簡単な地図にしてしまおう、という遊びも用意されている。山や川、道などの地図記号をマス目に置いていくと、その通りに砂場が立体的な地図になっていく。大袈裟に言えば、物のシンボライズを覚えるゲームとも言えてしまうけど、早い話、線だけで描かれた「地図」というものが、実は街の様子を示している、という相関関係を学習するものだ。
 この作品は、子供に、「地理」や「時間」というルールの基礎を教えてくれる。直接の勉強ではないが、情操教育ともちょっと違う、一風変わった、でも役に立つ作品だろう。
(納富廉邦)
(DOS/V MAGAZINE START 1996.07)

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