LOST EDEN 日本語版


 販売元:ビクターエンタテインメント
  定価:12800円(税別)
動作環境:DOS/V, 9821



 ゲームの楽しみ方には色々あるけれど、私はただ難易度が高いだけのゲームより、簡単にサクサク進んで、でもその世界やストーリーが面白いゲームが好きだ。この「LOST EDEN」は、そういう風にゲームを楽しみたい人には絶対気に入ってもらえる作品だ。動作も軽快で、シーンが変わるときに待たされてイライラすることがないのもいいな。
 舞台は、恐竜と人間が共存する世界。かつての恐竜と人間の理想的な関係が崩れつつある時代に、世界を破壊し、我が物としようとするマーカス・レックスと彼が率いるティラノザウルス軍団が暴れ回り始めた。主人公アダムは、かつて恐竜と人間が対等に協力していたことで、マーカス・レックスたちを追い払うことが出来たという歴史を知り、仲間と共に戦いの旅に出る。
 オープニングムービーを見るだけで分かるように、3Dアニメーションによる恐竜達の動きや、背景などのグラフィックは感動的なほど綺麗で、画面のうねるような動きは、世界の広がりを感じさせてくれる。人物などの、重厚なタッチの絵も、中世風の世界観とマッチして、画面を見るだけでもワクワクしてくる。その中で、プレイヤーは、主人公アダムとなり、様々な恐竜や、人々と協力し、彼らをまとめながら、ティラノザウルス軍団を追いつめていく。

 弱気になり守りに入ってしまった頑固な父親を説得し、世界中を回って、ブロントザウルスとそこの原住民に協力を呼びかけ、ティラノザウルスに対抗できる砦を築いていく。また、モササウルスから情報を得て、ティラノザウルスの弱点を知り、ヴェラキロトプスに依頼して戦ってもらったり、トリケラトプスを説得して、彼らの持つ技術をブロントザウルスが建造中の砦の強化に使ってもらったりしながら、じょじょに戦線を拡大していく。その作業は、基本的にはどこの国(この世界では「谷」と呼ばれる独立区域)でも同じなのだけれど、そこに住む原住民の人々にはそれぞれ個性があり、すぐに協力してくれる人もいれば、無理難題をふっかける人、他の頼み事をする人などもいて、それらの人々への応対がゲームの進行上重要になってくる。ほとんどの情報や進行は会話によって行われるけれど、日本語字幕が付いたのは、本当に嬉しい。

 一緒に旅をする仲間たちにも、それぞれドラマがあり、ゲームの後半は彼らの物語や彼らとの出会いや別れが中心になってくる。そしてヒロイン・イヴとの出会いや、先祖の亡霊へ会いに行く危険な旅、マーカス・レックスとの死闘と、ドラマはどんどん盛り上がっていく。
 操作も、マウスカーソルが状況に応じて形を変えてくれるから、クリックする場所やタイミングなどで失敗することもないし、ヒントはいつでも聞くことが出来るので、ゲームに慣れていない人でも簡単に遊べる。のんびり遊んでも、20時間もあれば終わってしまうので、それが物足りない人もいるかもしれないけど、シナリオが良くできているため、お気に入りの本を読み返すように、何度も遊べると思う。現に私は、英語版で散々遊んでいたのに、またしっかりはまってしまった。イギリス製らしい抑制の利いたエンターテイメントだ。ラストシーンがちょっとだけ哀しいけれど、それは運命。でも決してアン・ハッピーエンドではないと思う。
(納富廉邦)
(MediaDirect CD-ROM MAGAZINE 1996.04)

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