英語耳たこランド・入門編


 販売元:SSIトリスター
  定価:9800円(税別)
動作環境:Win3.1, Win95



 英語の学習は、発音やヒヤリングなど、文字だけでは伝えられない要素が多く、また、本による学習では、どうしても文法などが中心の非実用的なものになりがちだ。そこで、子供向けに絵本の体裁になっていたり、ビデオやカセットテープなどと本を併用する教材など、様々な工夫がされている。
 CD-ROMのおかげで大容量のデータを扱えるようになったパソコンでも、英語教材のソフトは数多く発売されている。絵や動画と音とテキストを同時に扱える上に、マウスクリックやキーボード入力など、インタラクティブな環境が既に整っているパソコンでは、かなり良質の英語教材を作ることができるメリットもある。実際、英語学習ソフトは、幼児向けから、英会話学校の通信添削付きの本格的なものまで、様々な種類があり、それぞれに工夫を凝らして作ってある。
 ただ、どうしても、実際の英会話学校と違い、学習する人のレベルに合わせたカリキュラムを組む、というわけにはいかないから、これさえやれば万全、というタイトルは無いものだ。自分のレベルに合わせて、いくつかのソフトを組み合わせて学習するのが、現時点での最良の方法になっている。
 その初歩の初歩の部分を学習するのに最適なのが、この「英語耳タコランド(入門編)」だ。このソフトは、アメリカの三歳児向けに、言葉を学習させることを目的として作られたものの日本語版だ。子供が最初に言葉を覚える手助けに使うものなので、日本人なら、大人が使ってちょうどいいくらいなのだと思う。そのくらい、ヒヤリングや英語の応用力に関して、日本人は弱い。
 英語学習教材の最大の欠点は、ある時期を過ぎると、いきなり難しくなって、ついていけなくなって、学習を止めてしまうというケースに陥りやすい点だ。だから、実は相当基礎の部分を、イヤになるほど繰り返して、英語という言葉そのものに慣れてしまうのが、一番効果的な学習なのである。特に、学生時代に英語が苦手だった人には、こういう方法でないと、ますます英語が苦手になってしまう。
 出来れば、子供と一緒に、一から言葉を覚えていくつもりで勉強するのが望ましい。実際、英語に関して、スタートラインは、子供とそれほど変わりはないものだ。記憶力の低下の文、案外、子供の方が有利だったりもする。海外の三歳児も、日本の三歳児も、日本の大人も、英語という言語に対する馴染み具合は、同じ様なものだ。
 このソフトは、基本的に、言葉を覚えよう、ということが目的になっているので、色や数字、身体の部位、乗り物、動物、食べ物や飲み物、日常の動作や家具、時計の読み方などの、英語に限らず、言語の初歩の初歩を扱っている。入門編、というだけあって、流石に、大人がやるにはカンタンなのだが、それは、この程度なら知っている、というレベルであって、決して、それに慣れているというわけではない。このソフトは、同じ様な作業を繰り返すことで、聴いて、見て、言葉そのものに馴染んでしまおう、というのが目的なのだ。だから、「Where is the Blue Ball」と言われて、青いボールの絵をクリックする、といった作業を、カンタンだからとバカにしてはいけない。大事なのは、「Where is the Blue Ball」と聴いたときに、それをいちいち「どこに青いボールがありますか?」と頭の中で翻訳して、青はこれ、という感じでクリックすることではなく、「Where is the Blue Ball」という言葉と、青いボールをクリックするという作業が、ストレートに頭の中で結びつくことなのだ。正解すれば「Excelence」とか、「Complete」とか、様々な言葉で褒めてくれる。これも、ああ、褒められてる、というニュアンスを日本語に翻訳するのではなく、直接感じることに役立っている。
 レベルは大きく三段階に分かれていて、それぞれのレベルごとに、9種類のゲームが用意されている。しかも、ゲームの中にも、いくつかのレベルが設定されているから、凄く易しいものから、ちょっとだけ手強いものまで、60段階以上の英語遊びが収録されていることになる。これを、少しずつ、繰り返し遊んでいるうちに、英語という言葉が、言葉としてスンナリと頭に入っていくようになるという仕掛けだ。ゲーム中には、日本語は一切表示されないし、音声も全て英語だけど、やはり絵があると分かりやすい。部屋の中で、そこで指定された場所をクリックするゲームや、言われた時間を指している時計をクリックするゲーム、さらには、いくつかの単語を続けて喋るナレーションを聴いた後、その喋った順番で単語が示す絵をクリックしていくゲームなど、英語の知識だけでは対応できない、覚える、という部分にもスポットを当てた趣向がなかなか面白く、ためになる。じっくり、遊んで、続編を待ちたい。
(納富廉邦)
(DOS/V MAGAZINE START 1996.05)

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