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A DAY OF CATS 陽気な子猫たち


販売元:トンキンハウス
定価:3800円
対応機種:HYBRID仕様




●A DAY OF CATS 陽気な子猫たち

生まれてすぐに母猫と死別した五匹の子猫の成長記録を、写真集的な構成で編集した作品。モノクロの導入ムービーから、作者の猫撮影の第一人者本多信男氏による前書き、そして本編である写真集(収録点数約200点)へと続く。基本的には猫の写真集といっていいような内容だが、エキスパンドブック(Mac版。windowsでは、その類似インターフェイス)で作られているのが面白い。全ての写真に日付、写っている猫の名前、コメントなどが付いていて、名前に関しては、ユーザーが好きにつける「名付け親」機能もついている。猫好きが満足する質の高い内容だ。

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A HARD DAYS NIGHT


販売元:ボイジャー
定価:6500円
対応機種:Macintosh,Windows




●A HARD DAYS NIGHT

ビートルズ主演、リチャード・レスター監督による映画「A HARD DAY'S NIGHT(邦題・ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!)」全編のQuickTimeMovieを中心に、脚本、キャスト、スタッフのデータ、監督インタビュー、劇場用予告編、ソングリスト、スチール写真などが、ムービーとリンクする形で収録されている。リチャード・レスター監督の処女作や、ビートルズのスチール写真など、映画に関連するビジュアルデータも豊富に収録し、エキスパンド・ブックの機能により、それらをリンクして参照することができる。モノクロ映像のため再生もスムーズだ。

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A World Alive


販売元:ボイジャー
定価:6500円
対応機種:Macintosh




●A World Alive

世界中の動物を扱った図鑑的CD-ROM。同名のドキュメンタリー番組(30分)と、データが収録されているのだけれど、そのデータ及びインデックスなどのインターフェイスを制作したのが、14才の少年ニューヨーク在住のマーフィー・スタイン君だ。11才からこのプログラムを制作し始めたという。目次の画面から、100種類以上の動物の詳細な解説や、動物のクイズ、ドキュメンタリーのムービーなどにジャンプするインターフェイスは、実に使いやすく分かりやすい。アルファベット順、種別、地域別、生態別といった項目が用意されたインデックスも付いている。

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A.L.-ARTIFICIAL LIFE


販売元:パイオニアLDC
定価:12000円
対応機種:HYBRID




●A.L.-ARTIFICIAL LIFE

元ラディカルTVで庄野晴彦の相方だった原田大三郎による、野心作。AL理論に基づいた、生物飼育プログラムだ。惑星を探索し、そこにある生物を採取、飼育機の光の量を調整して飼育すると、何段階かの進化を遂げながら、見たこともない不思議な虫が育っていく。採取はCD-ROMで行い、飼育はハードディスクにインストールしたプログラムを使うという構成で、パッケージには、書籍もセットになっている。結構飼育は難しく、よく死んでしまうが、コツをつかめば、すぐに最終進化型にたどりつく。異色作で、ネタは面白いんだけど、ちょっと飽きやすいのが欠点。

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AESOPOLIS


販売元:Quantum Leap
定価:輸入盤
対応機種:Macintosh




●AESOPOLIS

3歳から83歳(何故かハンパだなあ)までという幅広い対象年齢を設定して作られた、イソップの物語を探索するエデュテーメントCD-ROM。タイトルは、「イソッポリス」と読む。UncleBitsという、ヘンなコスプレおやじをガイド役に、うさぎとカメや、猫の首に鈴をつけろ、などの、誰もが一度は読んだ、イソップ童話の数々を自由に見て回ることができる。簡単な検索で、物語の古語バージョンを読んでもらえたり、物語の歴史的背景を解説してくれたり、ワンポイント風に「教訓」が紹介されたりなど、盛りだくさんの内容。米国MacUser誌で、四つ星半の高い評価を得ただけのことはある。

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Aladdin:Disney*s Activity Center


販売元:Disney Software
定価:輸入盤
対応機種:Windows




●Aladdin:Disney*s Activity Center

ディズニー映画「アラジン」を素材に、CD-ROM上でアラジンのテーマパークを作ってしまったような作品。映画のハイライトシーンはもとより、迷路ゲーム、間違い探しなど、アラジンを題材にした様々なゲームも楽しめる。映像のクオリティも高い。

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ALex-WORLD


販売元:バンダイビジュアル(Mac)、NECホームエレクトロニクス(Win)
定価:18800円(Mac)、15800円(Win)
対応機種:Macintosh、Windows




●ALex-WORLD

映画関係のスタッフによって作られた、二枚組の大作インタラクティブ・ムービー。未来にタイムスリップし、殺人犯と間違えられた男(ユーザー)と、それを助ける謎のロボット、アレックスや、セルナという活動的な女性との冒険を描く。人間とロボットが共存する世界で、ロボット差別やイルカ問題など、社会的な切り口を持つのも特色。ストーリーは、選んだ入り口や、会話(キーボード入力で会話が出来る)などで分岐していく。映画というメディアに似せようとしすぎたせいか、ストーリーを詰め込みすぎて、散漫になっているのが残念。動作も遅い。

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Alice


販売元:東芝EMI
定価:9800円
対応機種:HYBRID仕様




●Alice

画家金子國義の世界をまるごと一枚のCD-ROMにした、史上最強の作品集。音楽を加藤和彦、ディレクションを庄野晴彦(この作品でCD-ROMデビュー)というメンバーで作られた、CD-ROM草創期の名作。金子國義の膨大な作品を、仮想の建造物の中に配置、アトリエあり、キッチンあり、食卓ありと、様々なシチュエーションで作品を見せていく。画集としてのクオリティはもちろん、随所に隠されたカードを探したり、館を脱出するなどのゲーム性まで盛り込んだ、マルチメディア・エンターテイメントのお手本のような作品。今でもその衝撃力は衰えていない。

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AMERICANS1.0 1993LosAngels


販売元:デジタローグ
定価:8800円
対応機種:Macintosh




●AMERICANS1.0 1993LosAngels

五味彬の「Yellows」シリーズが、遂に海外の女性にまで発展した。その最初の試みがこのCD-ROM。基本的には「Yellows」と同じで、モデルが全てロスアンジェルスにいた女性になっているだけだ。前作Yellows2.0と同様デジタルスチルカメラで撮影された、100人の女性の顔、前後左右からの写真が入っている。それに、民族系統、スリーサイズや、身長体重などのデータが付き、そのデータから、例えばバスト90cm以上の女性、といった検索も出来る。まあ、考現学といえばそうだし、失礼といえば失礼な女性の見方ではある。モデルはYellowsに比べやたら素人くさい。

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Anatomist ver2.2英語版


販売元:インフィニシス
定価:47000円
対応機種:Macintosh




●Anatomist ver2.2英語版

医学CD-ROM。人体の各部の解剖図を見て学習する目的で制作された。欧米では、医学を学ぶ人々の間ですでにスタンダードになっているタイトルらしい。人体の構造とその働きから、骨格、筋肉、血液の循環などといった系統に大きく分けられ、そこから細部へと枝分かれしていく。その各ポイントは500以上あり、図解と説明文が表示される。収録されている各部の名称は2500以上に及び、それらを表示、発音させたり、図の任意の位置への書き込み、表示とハードディスクへの保存も可能だ。系統、部位、名称からの検索や、理解度をチェックするクイズなどもある。

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AngelGate


販売元:テイチク
価格:5800円
対応機種:Macintosh




●AngelGate

よく、ゲームをするとその人の性格が出ると言われる。実際、バーチャ・ファイターなどでも、その闘い方に、その人の個性が凄く反映して、だから面白い。アドベンチャー・ゲームでも、いくつかの選択枝の中からどれを選ぶかが、かなりプレイヤーの性格に沿っているケースが多い。
 この「ANGEL GATE」はその考えを進めて、アドベンチャー・ゲームと心理分析をミックスした、ちょっと変わったゲーム。ゲームを進行することによって、プレイヤーの心理分析までやってしまうのだ。
 基本設定がやけに凝っている。アメリカ、神経生理学センターのA.W.セリグマン教授が発表した、「大脳に貯蔵された記憶像を画像として再生する技術」に基づいたシステム「エクトロン2」が、このゲームの中心に存在する。このシステムは、被験者の記憶に残る過去の経験を他者が擬似的に追体験出来るというものだ。プレイヤーは、「あなたにどうしても伝えたいことがある」と書かれた一通の手紙に導かれて、このエクトロン2の前にたどり着く。そして、ある人物の記憶を追体験することになる。記憶は分断され、所々あいまいなものになっているため、プレイヤーは要所要所で、被験者の記憶を補正してやらなければならない。補正と言っても、二手に分かれた道のどちらに行くかなどの、簡単な身の振り方についてだから、操作自体は、コマンド選択型のアドベンチャー・ゲームと同じだ。
 ゲームは、古いヨーロッパを思わせる美しい写真と、静かな音楽、そして画面に示される言葉で進行する。かなり記憶があいまいな上に、夢と現実がゴチャゴチャになったまま、ストーリーは進行する。そのため、最初は話自体がつかめないが、ゲームが進むに従って、記憶は鮮明になり、そこで語られているストーリーも見えてくる。こういう、細かく分断され、時間軸も一定しない物語は、CD-ROMで語るにふさわしい内容であると思う。
 ゲームを進行させるプレイヤーの選択は、そのまま心理分析のデータとなり、好きな段階で、その時点での自分の心理状態を表示させることも出来る。どちらかというと、こちらがこの作品のメイン部分だろう。感受性や思考力など五つの要素をグラフで表示し、現在の心理状態を診断してくれる。
 何かヘンな作品が出てきたもんだ。

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ANGLE NUDE


販売元:がくげい
価格:9800円
対応機種:Macintosh、Windows




●ANGLE NUDE

人物デッサン用CD-ROM。様々な角度で撮られたヌードの女性のポーズ写真集。書籍なんかでも似た企画のものが美術書のコーナーに置いてあるよね。このCD-ROMは、それに加えて、ムービーを使い、好きなアングルからモデルを見ることを可能にしている。アイディアとしては面白いし、ヌードデッサンが手軽に家庭で練習できるのは魅力。ただ、再生画面もMacintoshのモニターでは、いくらなんでも小さすぎる。肩から背中の筋肉ってどうだっけ、といった確認に使うか、スケベ趣味で見るか、というあたりが正しい使い方なのではないだろうか。

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AQUA PLANET


販売元:フェアライトジャパン
定価:9800円
対応機種:Macintosh




●AQUA PLANET

ギタリスト高中正義による、リラクゼーション&~ュージックCD-ROM。高中サウンドとでも言うべきサスティーンの効いたギターサウンドに載せて、美しい風景写真が次々と表示されるリラクゼーションプログラムが、このCD-ROMの中核。その他に、定番のリミックスや、ディスクグラフィーなどはもちろん、高中正義のギターフレーズをキーボードに割り付けて、好きに演奏できるコーナーなど、独自のアイディアを織りまぜて、音楽もののCD-ROMとしては、かなりの高水準。パッケージデザインや、インデックス画面のデザインが悪いので損をしているが、かなりの名作。

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アラキトロニクス


販売元:デジタローグ
定価:8800円
対応機種:Macintosh




●アラキトロニクス

デジタルスチル・カメラで撮ったアラキの写真集=アラキトロニクス。タイトルが既になめている。撮影期間二日で、数千カットを撮り下ろした、というのもなめている。さらに、デジタルスチル・カメラの特質、ハードディスクの容量が許す限りの連続撮影が可能、ということをいいことに、100カット以上の連続撮影をした、ということもなめている。ましてや、それで数千カット撮り下ろしというのだから、相当なめている。
 でも、実の所、荒木経惟という人の写真集は、基本的になめているのが特色だったりもする。「東京ラッキーホール」のなめた製本と写真の数々。「冬へ」の、泣かせに向かう姿勢の徹底。一連の「写真日記」シリーズの完全になめた自己の露出。「近景・空景」の純文学パロディのようなリハビリ写真を豪華版で出版するという暴挙。彼の場合、なめるということが虚構の構築に繋がっている。だから、「センチメンタルな旅・冬の旅」や、「愛しのチロ」、「ジャンヌ」などは、なめてない。そういう路線はドキュメントであり純文学であるということか。
 某若手カメラマンが、荒木さんの「色景」を評して、「あんな色の配置とか色使いを、もし僕がしたら、もうメチャメチャ叩かれるだろうし、その前に、センスとして出来ない。」と語った。「名前があるから出来るし、その冒険は恐ろしいほどだ。」と言う。一言で言えば「なめている」ということだろう。
 なめた写真を撮るというのは、相当な虚構の構築力を必要とする。撮る姿勢がなめているのではない。作品として「なめた作品」を作り上げているのだから。その結果、写真一枚一枚は、それぞれに物語を内包しながら、なお独立性が強くなく、全体でまた別の物語を構築することにもなる。荒木経惟の写真集というのは常にそういう形で作られている。作品集ではなく作品としての写真集。だから正確には「写真集」という呼び方では間違っているかもしれない。「本」と呼ぶべきものであろう(それじゃ広すぎる?)。
 かつてロックで流行した「コンセプト・アルバム」というのがあったが、それに近い形であると言えば分かりやすいか。キンクスのローラは、一曲として独立しても名作だけど、アルバムの中では風景の一つとなる。そういえば、そのなめかたとかっこよさに関して、キンクスと荒木経惟は似ている(今気がついた)。何でもコンセプトにしてしまうというのは、何でも虚構にしてしまうということかもしれない。キンクスと荒木さんを見ているとそう思う。もしくはエンターテイメント化。
 書籍版「アラキトロニクス」は、それでもCD-ROM版と比べて完成度という点では高い。書籍というメディアの性質上、どうしてもページ構成が重要になってくるし、連続撮影をそのまま並べても大したインパクトがないどころか、退屈してしまうということもある。そのせいか、きちんと構成してあるし、書籍としては破格のボリューム感もあるし、デジタルスチル・カメラによる質感のチープさが、荒木経惟カラー路線のチープな色合いとマッチして、よりいっそうの統一感を見る者に与えることに成功している。手抜きのように見える(実際にあれは手抜きだ、と言うアラーキー・ファンもいるし、本当の所はわからないけどね)部分も含めて、トータルなメディアとしての完成度は高い。CD-ROMは、そのランダム・アクセスが可能という特質を生かした構成の分、完成度とかいう以前の、何かヘンなメディアになっているのだ。そして、その部分がまた、なめてて、作品としての面白さはCD-ROM版の方に軍配が上がる。だからどうした、ということは全然無いけど。

 CD-ROM版「アラキトロニクス」の二つのモードがある。千点を越す収録写真の中から常にランダムに抽出されるスライドショーと、連続写真をアニメーションのように連続表示するモード。連続表示のモードは、正にコンピューターというか、書籍では出来ない作業で、これこそCD-ROMの荒木経惟、という感じもするが、これがたいして面白くないのは何故だろう。そりゃ、QuickTimeMovieを見て、「凄い、マックもここまできた」とか思う人は、こういう動きがある見せ方のほうが面白いと感じるのかもしれないけれど、荒木経惟の写真が面白く見られるのか、という点で見ればどうだろう。一つのシークエンスは撮影過程において連続した時間を記録していくように見える。それはスチール写真の魅力とは相反するように思える。時間の連続性をカメラで追うのは、ドキュメントだし、この作品の写真は、荒木さん本人が登場しているカットをみるまでもなく、荒木経惟の作品の方向として明らかに「虚構=エンターテイメント=やらせ」路線の作品だ。どこかで一度、時間軸や流れを再構成しないことには、作品としての物語性はどんどん薄弱になっていく。それは、同じモデルを使った五味彬の「MASH」を見れば明らかだ。それぞれの写真が持つ物語性は連続撮影の連続表示という形を得て見事に消されていく。それをやるなら、映画も撮る荒木経惟なのだから、ビデオカメラを持たせるべきだろう。写真の連続表示で行く、スチール写真の写真家としての荒木経惟を見せたいというのなら、編集にもっと工夫をしてほしい。再構築を作品自体が求めているのだから。
 一方、ランダム・アクセス・スライドショーのモードは見事な荒木経惟の作品になっている。無作為だろうと何だろうと、一度それぞれの写真に分解されて再構築されていると、この手のアラーキー作品は本当に魅力的になる、ということがよく分かる。見るということと見せるということが明確に分離して心地良い。ちょっと前に表示された作品によく似た、でも少し違う作品が、繰り返し表示される。だから常に物語が更新されていく。この際、モデルがやらしさより、アングラ・アートの臭いを濃厚に身にまとっていることや、集中した撮影のせいで、多少物語が狭い範囲にとどまってしまっていることは些細な問題にしかならない。ま、モデルに関しては、気になりだすとかなり気になるのだけど。
 荒木経惟はなめた見せ方が良く似合うのは当たり前、という気さえする。

 目のアップから常に始まるスライドショーは、モデルが目にあまり魅力がないことを含めて、やはりなめた構成だ。あとをランダムに(ある程度の法則性はプログラムされているらしいが)見せるというのも、なめてると言えば言えるけれど、そこがこの写真集の最もアラーキーらしい部分だし、その点で成功している。だからこそ、この見せ方は荒木経惟だけに成功するのであり、間違っても他の写真家に使ってはならない。それほどなめている。新しい写真の見方では全然ない。もっといえば、別にCD-ROMで写真集を作るに際して、新しい見せ方なんて必要ない。その写真家の写真に応じた見せ方でいいのだ。それがたまたま今までにない見せ方になったとしても、それは新しいとは言わない。写真は見るものだもんね。

 それにしても「アラキトロニクス」というタイトルはなめている。CD-ROMの中で、本人自筆と思われる題字を見ると、本当にそう思う。あの題字はメチャメチャかっこいい。

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アラン・ケイ


販売元:オープンブック
定価:5800円
対応機種:Macintosh




●アラン・ケイ

Macintoshユーザー、特に古くからのユーザーは、妙にMacintoshというか、Apple社の歴史に詳しかったりする。Macintoshの初心者向け解説書などにも、何故かMacintoshの歩みのような文章が載っていることが多い。おかげさまで、僕も、ウォズニアックやらスカリーやらアトキンソンなどという名前に馴染んでしまった。具体的にはほとんど知らないけどね。大体、普段使っている道具の作者やら開発チームやらが何故一般常識として通用しているのだろうという気もするが、そこらが、コンピューター文化というものなのだろう。文化というからには歴史がある、というところか。しかし、これだけMacintoshユーザーの裾野がひろがっている現在、それがどうした、という人が増えているのは確かだと思う。このCD-ROMは、アラン・ケイという、Macintoshの歴史上必ず登場する、ほとんどMacintoshというコンピューターの基礎を作った人ともいえる人の、論文と評伝を、映像や図版と共にエキスパンド・ブックの形にしたものなのだが、アラン・ケイ?誰、それ?という人がいたって全然不思議じゃないと思う。
 ところが、ほとんどのMacintoshユーザーは、その名前に聞き覚えがあったりするから恐ろしい。別に知らないなら知らないで、全然構わないし、それでMacintoshが使えなくなるわけでも、何かMacintoshを使うに当たっての有益な情報が得られるわけでもない。でも、他のMacintoshの偉人さんはともかく、この人は憶えていて損はないかも知れない。このCD-ROMを見ていると、そう思う。それほど、この人の論文は面白い。英語の教科書に載ってるらしいけど、それは僕は知らない。英語の授業はもう何年も受けてないし。
 それにつけても、このCD-ROMに収録されている論文、特に「ダイナブック」というコンピューターの構想についての話は凄い。子供が戦闘ロボットの絵を描いて、それを大人に見せながら、「ここからミサイルが出てね、そんでここから羽根が出て飛ぶの。身体は超メタル合金スーパーで出来てて、目からは光線が出て…」と、説明してる光景が頭に浮かぶような、そんな論文。それが、何やら本当に実現すると思わせるような数々の実験や理論の元に展開される。スリリング&ファンタスティック!って感じ。
 「ダイナブック」構想は後にMacintoshを生むのだけれど、そのMacintoshがオモチャに見えるほどに、この論文で書かれているパーソナル・メディアとしてのダイナブックは物凄い。いかにMacintoshが妥協の産物であるかが分かる。それが分かるだけでもこのCD-ROMを見る価値がある。エキスパンド・ブックにより、テキストと動画をリンクさせ、一つのメディアで見せるという、アラン・ケイが求めたメディアに近い形で、アラン・ケイの論文を読む、というのも、気持ちとしてはよく分かるけれど、それも、コンピューターもまだまだだな、と思う気持ちを助長してしまう(著作権の問題もあるのだろうが、テキストデータをコピー&ペースト出来ないようにしているのも、アラン・ケイの理想に反するように思う。)。それほど、彼の提唱は、当然コンピューターに求められてしかるべきものだと、僕には思える。QuickTimeの再生速度が速くなった、とか浮かれている場合ではないのだ。普通の人が普通にコンピューターを使う時代は、ライバルは他のコンピューターではなく、他のメディアでなければならないはずだ。このCD-ROMを読んでいると、アラン・ケイが既にそれを考えていたことに驚かされると同時に、やっぱりそうだよなあ、とも思う。
 最後に以下の引用をCD-ROMを作る全ての人々に捧げてみようかと思う(既に常識だけど)。
 「大人がタイムシェアリング・システムを使用するときには、ある程度のパワーで我慢するが、子どもたちはその程度の処理能力では満足しない、ということだ。タイムシェアリング・システムに出来るのは、粗雑なグリーンのワイアーフレーム・グラフィックスをゆっくり動かすか、方形波で楽音をつくるくらいがせいぜいのところだ。子どものほうはといえば、フィンガーペイント、水彩画、カラーテレビ、本物の楽器、レコードなどに親しんでいる。『メディアはメッセージ』であるなら、性能の劣るタイムシェアリング・システムのメッセージなど、まったくのたわごとに過ぎない。」
(「パーソナル・ダイナミック・メディア」より)




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