「海の星」
尾花ゆきみ著 原生林 1400円(税別)

誰だって、大人になる前の時期を通り過ぎてきたはずなんだけど

 インターネットで、色んな人と知り合うと気がつくことがある。そこでは、性別や年齢が、ほとんど何の関係もないということ。そういうことを気にする人もいるようだけど、私には、本当に関係ないな、と思える。実際に会って喋ると、どうしても相手の見た目のことが気になって、例えば、十歳の子供と話している時に、純粋に対等という気持ちにはなれないこともあるけれど、メールを読んだり、チャットしたり、伝言板やICQなんかで話したりする分には、そこにあるテキストが全てで、その向こうに、どんな姿をした生き物がいるかなんて、本当に関係ない。そして、そうやってお喋りしていると、子供と大人の間に、どんな差があるんだろうとも思ってしまう。実際、差はない。ただ、それはインターネットという、社会から切れた場所で出会っているからなのだろう。
 つまり、社会から切れているのが子供で、繋がっているのが大人というだけかもしれないということだ。でも、子供を取り巻く、子供の社会は、現実社会の偽物のようにして存在する。そこで戦ったことは忘れてはいけないような気がする。大人になる前の時期の重要さ。「海の星」は、その時期を忘れないでおくための装置だ。