高橋克彦・明石散人「日本史鑑定」
徳間書店 1600円

歴史上の定説は間違いだらけ?日本史を徹底的に鑑定

 歴史の謎、例えば、邪馬台国の場所について、「魏志倭人伝」の記述から場所を特定するのは無意味だと説く明石散人。彼によると、「魏志倭人伝」は、魏が呉を牽制するために書いたもので、読み手も「呉」を想定している。従って、邪馬台国は、呉の背後に魏と結んだ強国があるぞということを呉にアピールするためのもので、だからこそ、邪馬台国の場所を魏志倭人伝では東シナ海の南、つまり呉の背後と記述しているという。説得力はあるが身も蓋もない、まるで、ミステリで名探偵が、壮大なトリックを種明かしした後のような感じだけど、その推理の過程も、やはりミステリみたいでエキサイティング。ロマンを介さず、そこにある文献、資料を正確に、文面通り受け取ることで、歴史に新しい光を当てるといえば簡単だけど、資料を、文字通り正面から受け取ることは難しい。というより、そこにロマンを介することを研究と呼ぶ風潮は確かにある。CD−ROMは、ただのメディアの一つだし、インターネットもただのネットワーク。そこにロマンを介するから、何だか、インターネットが悪の巣窟みたいな報道がなされたりする。
 高橋克彦と明石散人が、それぞれの見地から「日本史」を徹底的に鑑定していくこの本は、物事の受け取り方の教科書なのだ。