「妖鬼化(むじゃら)」
水木しげる著、ソフトガレージ、各巻6600円(本体価格)

絵と音で感じる妖怪画集の決定版

「妖鬼化」(全八巻)と「スキャントーク」

 「妖鬼化」は、水木しげるの作画活動五十周年を記念して出版される、全八巻の妖怪画集。収録原画1600点以上、ノートリミング、オールカラーという正に、妖怪画集の決定版的作品集。現在、2巻まで出ていて、5月に完結予定。完結の暁には、全館予約購読者に、京極夏彦デザインの特製ボックスが贈られる上に、現在ではほぼ入手不可能な作品を収めた豪華復刻本も付く(これらがもらえる予約は既に締め切られている)。まあ、それだけでも、この画集は、十分買う価値がある。印刷も綺麗で、画集としての美しさはもちろん、世界中の妖怪を描いた、妖怪大百科としても使える、鳥山石燕の「画図百鬼夜行」以来の、本格的な妖怪データベースなのだ。
 そして、さらに、この画集には、妖怪の音が収録されている。全ての絵の下に、何だか出来損ないのバーコードのようなものが印刷されているのだが、これが、音を記録し、印刷することができるという大日本印刷とオリンパスが開発した「スキャントーク」システムだ。
 「印刷文化とデジタル文化の融合」をコンセプトにしたという、このシステムは、音声をコード化して印刷、それを専用の読み取り機「スキャントークリーダー」を使って再生する仕組み。コード化のフォーマットが決まっているから、スキャントークリーダーさえあれば、後は、このシステムを使った印刷物なら、簡単に音を再生できる。このシステムが、今後、どのような発展を遂げるかは未知数というか、何だか不安が多いのだが、この画集においては、「妖怪」という本来形のないモノに対して、絵と音の双方で感じることが出来るわけで、その効果は大きい。音があることで、妖怪を感覚的に掴むことが出来るのだ。