童話:ふしぎなあきち

 僕はいつものように、秘密基地に行くつもりだったんだ。僕の秘密基地さ。空き地を通り抜けた所にあって、秘密の宝ものだっておいてある大事な場所だ。
 それで、空き地のほうに歩いてたときに、それを見たんだ。
 何を見たって?
 なんだか僕にもよくわかんないや。赤い、大きな金魚みたいなもっとしっぽが長いやつなんだ。それが空き地のほうに落ちていったんだ。
 なんだろうって思った僕は、空き地まで走ったね。そしたら空き地はいつも通りで、女の子が一人いるだけなんだ。知らない女の子だけど、僕を見てニッコリ笑ったから、ぼくもニッコリして、
「なにしてるの? ここに何か落ちてこなかった?」って聞いたんだ。
「何も落ちてきたりしないよ。なんか落としたの?」女の子が不思議そうな顔して言うもんだから、僕ははずかしくなって、「私は、海見てるの。」って女の子が言ったときにうっかり「ふーん」といってから、ちょっとびっくりしたな。「こんなきれいな海、はじめてみるの。」って女の子が言うから、僕はヘンな子だなあっておもったけど、とってもうれしそうに空き地を指差して「ほら、あそこでおさかながはねた。」とか「波がキラキラしててほんとにきれい!」とか色々いうもんだから、僕も空き地をじーっと見てみたんだ。
「ジャングルだ!」
女の子が、ヘンな顔をして僕を見たけど僕は気にしなかった。どうして、いままで空き地だって思ってたんだろう? 大きなすごくきれいな色の鳥が飛んでて、大きな木がいっぱいはえてて、僕は嬉しくて、女の子に「すごいね」って言ったんだ。
「うん、すごい」って女の子も言ったよ。
「でも、ふたりで並んで、違うものを見てるの は、ちょっとさびしいな。」って女の子が言ったんだ。ぼくもそんなことを思ってたから、「うん、いっしょにみようよ。」って言って、二人で相談したんだ。「北極は?」「アメリカ?」「飛行機な んかはどう?」「サーカスがみたい!」
 サーカスを見ながら、僕はこの女の子を 僕の秘密基地に連れてってあげようって考えてた。サーカスもホント楽しかったけど、この子と一緒なのがとっても嬉しかったんだ。
 夢中でサーカスを見てた僕は、お父さんとお母さんが来てたことに気が付かなかった。お父さんは、今までに見たことも無いヘンな顔をして、ボンヤリすわってた。僕が呼んでも、聞こえないみたいだ。お母さんは、いつのまにか泣きだしてた。どうしたんだろう?
「あのね、秘密基地に連れていってくれる?」
突然、女の子が言うんだ。僕は少しお父さん達が心配だったけど大人なんだから大丈夫だよね。僕は女の子と手をつないで空き地を走りだした。
 ほっぺたに風があたって、つないだ手は あったかくて、すごく気持ち良かった。ちょっと振り返ってみたら、お父さんとお母さんが手を振ってる。僕はなんだかホッとして、女の子に言ったんだ。
「ねえ、名前、教えてくれる?」